高校受験や大学受験を前にして、学生さんはみんな多かれ少なかれ不安を抱いていることだと思います。入試というものの性質上、それはどうしても他者との合格枠の奪い合いになります。そのことから、仕方ない側面もあるにはあるのですが、点を取るためだけの方法が独り歩きし、本来その科目がどのような意図で指導要綱に入れられているのか、完全に置き去りにされていることもしばしばです。勿論、時代とともに必要とされる技能は変化していきますので、指導要綱を妄信するのではなく柔軟な対応が必要です。
私は様々な科目について学生さんに指導を行っていますが、いずれの科目においても絶対に守るべきであると心に決めた方針があります。それは「単に問題の表面的な解き方は指導せず、一つひとつの公理・定義・定理に加え、式変形・式の形などがもつ意味を正しく丁寧に理解してもらうこと」です。これは単に高校受験や大学受験を通過する上で役に立つだけに留まりません。高校・大学入学後だけでなくそれ以降の世界でも、より深く物事を学ぶ上で必ず役に立つと確信しているためです。
特に大学以降の勉強の難しさは中学・高校時代のものを遥かに凌駕します。また、手取り足取り全てを教えてくれる学校の先生や塾の先生といった存在もほとんどいなくなります。周囲にやれと言われてやるだけだったり、問題の表面的な解き方だけを学んできた学生さんが、大学以降の、限りなく深く、そして広い学問を学ぶというのは、現在位置も方角も、そして移動方法すら知る術がないままに大海に放り出されたような状況に例えることができるでしょう。このような状況に陥らないためにも、絶対に、全ての学問の土台となる部分を妥協して教えるつもりは毛頭ありません。将来、未知の領域に挑戦していくときには、確固たる土台となってその人を必ず助けてくれるでしょう。